Vol.2 木造建築の家に「木」は何本使われている?
木造建築の家には何本くらいの「木」が使われているのでしょうか?
一般社団法人 全国木材組合連合会が公開している「在来工法(ざいらいこうほう)木造住宅
(もくぞうじゅうたく)の木材使用量調査(ちょうさ)」によると
45坪(つぼ)程度の住宅を建てるのに、樹齢(じゅれい)約50年の杉の木をモデルにした
場合、平均の高さを22メートルとして、木の細い部分など使用できないところを考慮し、
ぶどまり60%として試算すると、約90本の「木」が使われていることが分かります。
90本の「木」は、どのような過程を経て住宅材として2度目の人生を活きるのでしょうか?
まずは、植林です。
3年~4年の苗木を1ha(テニスコート38面)に、1mの間隔を空けて約3,000本が 植えら
れます。
苗木を植えてから5年~7年は、杉の成長を阻害するツル直物や下草、広葉樹などが排除され
、ツル植物の排除は7年以降も引き続き行われます。
10年を過ぎると木の下の方にある枝を取り払う、「枝打ち」と言う作業が行われますが、
それは、「木」をまっすぐ成長させるためと、節を残さないために行われます。
しかし枝打ちは、「木」の成長を計算して行わなければ「木」の成長力を阻害することにも
なり、枝打ちを失敗すると「木」の皮が剥げ成育に影響がでるため、枝打ちは熟練の技術を
必要とする重要な作業となります。
枝打ちは「木」の成長にしたがって、裾枝打ち、背丈打ち、梯子打ちと次第に高い枝を落と
していき30年近くまで計5回ほど行われます。
また、育ちの悪い木、枯れかかった木、あるいは育林木など、成育を考えている木の妨げに
なる広葉樹などは伐採して間伐していかなければなりません。
間伐は、その後も5年おき程度に実施され、その都度10~25%が伐採されます。10年~13年
目くらいまでの間伐は切り捨て間伐と呼ばれ、除伐同様切った木材は使用用途がなく捨てら
れる運命に・・・
植林から15年くらいに経つと、直径で12~13cm程度になり、間伐材でも商品価値を
持つようになるのですが、15年で12㎝~13㎝にしか成長しないので、住宅材として第二の
人生を歩むまでには、気の遠くなるような年月と重作業が必要となるのです。
住宅材としての商品価値を持つ50年が経過するころには、3,000本の杉は500本~600本
しか残っておらず、50年かけて約6軒分の住宅材しか作れないことになります。
しかし視点を変えると、50年という長い年月をかけ競争を勝ち抜いた上位20%の貴重な
「木」であるとも言えます。その反面、80%の苗木が犠牲になっていることを考えると、
「木」の命は尊いですね。
参考 一般社団法人 全国木材組合連合会
http://www.zenmoku.jp/
樹齢
これから木造建築で家を建てることを考えている方は、約90本もの「木」と今後何十年もの
間一緒に暮らすことになるわけですから、新築の家を建てる前やリフォーム前に、「木」の
事を少しでも多く知り、長く住み続けられる家づくりを目指したいですね。
「木」の事を知っているのと、知らないのとでは、住宅の寿命に大きな差が生じてしまうの
で、家を大切にしたい、綺麗な家に住み続けたいと考えている方には必要な知識ですね。
さて、先ずは木の寿命(樹齢)についてです
住宅に使用される木材は、植林から伐採されるまで凡そ70年~80年を山で生育させる事で、
住宅木材としての商品価値が持てるようになります。
70年~80年というと日本人の「平均寿命」「健康寿命」ですね。
厚生労働省によると、日本人の平均寿命は、男性が79.55歳、女性が86.3歳となっています。
一方で健康寿命は、男性が70.42歳、女性が73.62歳との事です。
つまり、人の介護を必要としてから、この世を卒業するまで、男性は9.13年
女性は12.68年もの間、人の介護なしでは生きられない不自由な人生が存在すると、統計が
示しています。
しかし私は、100歳まで介護なしで生きることを目標としています! これも一つの社会
貢献ですかね?
さて本題に戻しますと、木材に使用される「木」は、山で70年~80年の人生を経て、約20%
の優れた「木」だけが住宅木材として第二の人生を歩み始めます。
「木」の種類、山での寿命、製材の仕方など、さまざまな事が関係して寿命が決まりま
すが、法隆寺の宮大工として著名な故・西岡常一氏が「樹齢千年のヒノキは千年もつ」と
語られたくらい、「木」の寿命はとても長いのが基本です。
「木」は樹齢に関わらず、その「木」本来の寿命と同じ年数に耐えられるとも言われて
います。
実際、樹齢1000年のヒノキで作られた法隆寺五重の塔を見られた方も、多くいらっしゃると
思いますが、五重の塔は、既に建てられてから1300年の歳月を超えた現在でも、優美な姿
を変える事無く生き続けています。
この法隆寺の五重の塔は、世界最古の木造建築であるとも言われており、これまで
「五重の塔」や「三重の塔」と言われる木塔が、地震国の日本全国500ヶ所以上にあり
ますが地震で倒れた事例はなく、1995年の阪神大震災でも兵庫県内にある三重の塔は
1基も倒壊しておらず、未だに記録更新を続けています。
「木」の強度も関係していますが、耐震構造である「柔構造」が大きく関係しているため、
本記事では説明を省きますが、ご興味のある方は観光に行かれる前に、「柔構造」について
学んでから行かれると、深い学びとなり将来忘れる事のない想い出となるはずですよ。