さて今回は、国内木材と輸入木材について、林野庁の公式データを分析して国内材の現状について調べてみた。
日本の新設木材住宅戸数について、国土交通省の「建築着工統計調査報告書」を見たところ下記のようなグラフ(図1)の結果となった。
1994年~2017年のデータであるが、緩やかな右肩下がりで、新設の木造住宅戸数は減少を続けているが、直近の過去20年で見るとほぼ横ばいであり、過去10年で見てみると、2009年の底からV字回復しているようにも見える。
2009年に木造住宅が激減したように見えるが、実は総戸数で激減した年でもあり、総戸数で約264,000戸数も前年割れしている。
木造住宅(‐11.4%)、鉄骨鉄筋コンクリート造(‐58.8%)、鉄筋コンクリート造(‐44.8%)、鉄骨造(‐26.3%)
この激減の理由は、間違いなく2008年9月15日にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した、リーマンショックの影響が大きいと思われる。
高齢化の進展により労働力人口の減少や、中古住宅へトレンド転換などの要因を説く専門家もいるが、景気後退の影響が断然大きいようにも思える。
下記のグラフ(図2)は、日経平均の終値をグラフ化したものだ。
木造住宅着工戸数の近似曲線と日経平均の終値が同じ動きをしており、景気によって大きく左右されるのは間違いなさそうだ。
※上記のグラフは、「農林水産省 林野庁 木材需給表(令和元年データ)」と日経平均を基にして「ひでけん」にて作成
しかし、日経平均はV字回復して20年前の株価を超えてきているが、住宅戸数については底値で推移しており、上げ幅が小さく今後に期待したいところだ。
木材の供給量
さて、新築住宅戸数が伸び悩むなか、木材の需要と供給のバランスがどうなっているのか分析したところ国産の木材供給量を輸入木材の供給量が大幅に超えており、令和元年の国内供給率は38%である事が分かった。
10年前の平成22年と比較すると、徐々にその比率は増えてきているが、木材の総供給量でみると、まだまだ輸入木材に頼っている状況のようだ。
※上記のグラフは、「農林水産省 林野庁 木材需給表(令和元年データ)」と日経平均を基にして「ひでけん」にて作成
上記のグラフ(図3)は、輸入木材と国産木材を比較する際によく見るグラフだ。
この木材供給量のデータを紐解いてみると、建築木材以外にも多くの木材が含まれていることが分かった。
どのような木材が輸入されているのかというと、①丸太、②製材品、③木材パルプ、④木材チップ、⑤合板等、⑥その他、⑦燃料材(薪炭材)などだ。
では、実際に建築木材(①②⑤⑥)に絞ってグラフを作成したところ、面白い結果が出たので見て欲しい。下記のグラフ(図4)は、日本国内での建築木材の需要と供給量(国内・輸入)の推移と、建築木材の需要に対する国内木材の自給率をグラフにしてみた。
図3のグラフでは、輸入木材に国内木材の供給量が負けていたが、建築木材に絞ると下記のグラフ(図4)の通り、10年以上前から自給率50%を超えており、令和元年では自給率67%*¹まで伸び輸入木材を圧倒している事が分かる。
このグラフ(図4)から想定されるのは、日本の木材を使った住宅を愛する日本人が少なからず増えてきているのではと嬉しく思う。
※上記のグラフは、「農林水産省 林野庁 木材需給表(令和元年データ)」と日経平均を基にして「ひでけん」にて作成
※国内木材は丸太の供給量を使用
※輸入量には林野庁データから丸太、製材品、合板等、その他に含まれる構造用集成材(平成17年データから40%)を基に計算
ひでけんでは、宮崎県産の檜と杉の無垢材をふんだんに使った、「いつまでも温もりのある住まいづくり」を先代の代から受け継ぎ、多くのお客様にご利用いただけている。
これも、地産地消の無垢材の魅力を感じていただけているからだろう。
まとめ
今回は、日本の建築木材の需要と実際に供給されている木材の67%が日本の木材である事を紹介しました。
国内で消費されている木材は、海外からの輸入が多く貿易赤字が続いていますが、国の戦略もあり国内の木材供給量も年々増加してきている為、これまで以上に国内産の良質で丈夫な無垢材が手に入りやすくなってきています。
これから家づくりを考えている施主殿は、日本の気候で育った日本の環境に順応できる丈夫な木材を使い、100年時代を健康に生きていく為にも、十分な知識と確かな技術を持った信頼できる熟練の大工と一緒に造り上げて欲しいと願います。
それが大切な家族を守る『いつまでも温もりのある住まいづくり』の王道であると信じているからです。
「JAS規格」 Japanese Agricultural Standardの略称で「日本農林規格」のことです。
◆ 参考文献・出典
・林野庁 企画課 木材需給表
・令和元年度 森林・林業白書